多様性がシェリーのアイデンティティのひとつであることに疑いの余地はありません。フィノ、オロロソ、モスカテル…さまざまな種類のワインが、多くの色の範囲、数え切れないほどの卓越したその香りのバラエティや、味、舌触りが原産地呼称に属するシェリーにあることを私たちに示しています。
シェリーには最も色の薄いものから濃いもの、最も辛口のものから甘口のものと幅広いタイプがあります。
そしてその全てはたった3種類の白ブドウから生まれ、また、素晴らしい独自の生産工程から生まれるものです。結果として、長年のヘレスのワイン生産の伝統と醸造学は世界で一番進化したもののひとつといえるでしょう。原料であるブドウの偉大な重要性に関係なく、その起源と自然である製造工程は、それぞれのワインの最終的な運命を決定する異なるステージで、ワイン生産者によってなされるという一連の決定を含みます。このように、色調、香り、味わいや骨格によって定義される、異なる「ファミリー」のシェリーが生産されます。
いったいシェリーのタイプの違いはどこから来るのでしょうか?
シェリーの製造に使用されるブドウの大部分は、新鮮なものを圧搾して採ったモストを完全発酵させます。このようにして完全に辛口のワインが造られます。つまり残糖分(アルコールに変わっていない糖分)がごく微量であるということです。一般的にパロミノという品種のブドウを使用し、収穫後すぐに圧搾場に運ばれ、軽い圧力で、クリーンな色の淡い軽やかなモストが得られます。これらの完全発酵によって得られる「ベースワイン」は完全に辛口の白ワインで、全てのシェリーの「ヘネロソ」および「マンサニーリャ」のもとになります。
しかし、ペドロ・ヒメネス種とモスカテル種をワインにする過程にはかなりの特徴があります。この場合、醸造学上の目的は、できる限り多くの糖分含有量のあるワインを造ることです。そのため、パロミノより高い熟成度に至るこれらの種類が選ばれました。これらはパロミノ種をはるかに上回る熟度に達し、「ソレオ(天日干し)」と言われる、数日間ブドウの房を天日干しして、その水分を蒸発させ、干しブドウ状にする工程に進み、「パシフィケ―ション」(スペイン語で“pasa”もしくはレーズンからくる言葉)に持っていきます。このように干されたブドウを圧搾して得たモストは、糖分の濃度が非常に高いため、非常にゆっくりと発酵が始まります。この発酵は、ワイン生産者がアルコールを添加して止めるので、アルコールに変わる糖分はほんの一部だけで、ほとんど全ての糖分は残ることになります。
このようにして得られたワインは、完全発酵によって得られた辛口ワインとの「カベセオ(ブレンド)」に使用されることが多く、最終的に様々な甘さの段階のワインができます。
それはしたがって、完全発酵か部分発酵という発酵の種類が、極辛口のワイン(ビノ・へネロソ)もしくは非常に甘いワイン(ビノ・ドゥルセ・ナトゥラル)を得られることを可能にします。
これらのふたつの種類のタイプのワインをブレンドすることで、違う甘さのレベルのワインが造られます。(ビノ・へネロソ・デ ・リコール)
各種の違いの基本的な要素は、ボタ(樽)の中でワインが進化していく熟成のタイプです。生物学的熟成のみを行ったワインは、フロール(酵母)の天然の膜によって空気と直接触れることから保護され、もともとの淡い色、軽く、エーテルを含む骨格を保ちます。そしてまた、膜を形成する酵母の影響を受け、一連の独特の香りと味を身に着けます。
一方酸化熟成、もしくは物理化学的熟成を経たワインは、直接に空気と触れることで、徐々に暗い色味を帯びてゆき、さらに、骨格が凝縮することによって、複雑なアロマと口の中に長く残る独特の風味を形成していきます。ワイン生産者がワインを少なくともアルコール度数15%まで、または17%以上まで酒精強化することを決定するということは、ワインにフロールの膜を維持するか否かを決めることで、それは、熟成タイプと時間の経過で手に入れる官能的特性を決定することになります。